これまでの記事でも何度か所得控除について触れてきました。所得控除とは一定額を所得金額から差し引くことが出来る仕組みです。所得金額から差し引くことでその分税負担が軽減されますので、該当のものは是非使いたいものですよね!
ただ、実際にどのような所得控除があってどのような条件で使えるのか?など考えられたことはあまりないと思います。
ということで所得控除について説明していきたいと思いますが、今回はまず「配偶者控除」と「配偶者特別控除」について解説していきたいと思います!
・所得控除の種類
・配偶者控除と配偶者特別控除の違い
Contents
14種類の所得控除
基礎控除 | 一定金額までの所得の方が受けられる控除。令和2年から所得に応じて控除額が変わる。所得が2500万円超は基礎控除なし。 |
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配偶者控除 | 所得が48万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除(その他詳細は後述) |
配偶者特別控除 | 所得が48万円超133万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除(その他詳細は後述) |
扶養控除 | 所得が48万円以下の配偶者以外の親族などがいる場合に受けられる控除 |
障がい者控除 | 本人や扶養親族が障がい者などである場合に受けられる控除 |
勤労学生控除 | 納税者本人が所得75万円以下の勤労学生である場合に受けられる控除 |
寡婦(寡夫)控除(ひとり親控除) | 配偶者と離別・死別している場合やひとり親である場合などに受けられる控除 |
社会保険料控除 | 本人や家族の社会保険料を支払った場合に受けられる控除 |
生命保険料控除 | 生命保険や個人年金などの保険料を支払った場合に受けれる控除 |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に受けれる控除 |
小規模企業共済金等掛金控除 | 諸企業企業共済金・個人型確定供出年金の掛金を支払った場合に受けれれる控除 |
雑損控除 | 災害などによって、資産について損害を受けた場合等に受けられる控除 |
医療費控除 | 本人や家族の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除 |
寄付金控除 | 国や地方公共団体などに寄付をした場合に受けれる控除 |
今年(令和2年)からの変更点
・基礎控除は38万円→48万円へ引き上げ。一律だった控除額が所得により変動*し、所得が2500万円超はゼロに。
・給与所得控除、公的年金等控除は一律10万円引き下げ。
・寡婦(寡夫)控除の条件が見直し。未婚で子のいる方もひとり親控除として対象に。
ほとんどの方には実質的な影響がないのであまりニュース等で触れられる機会がありませんが、実は今年(令和2年)から変わっていることがいくつかあります。
未婚で子どもがいらっしゃる方は今まで対象でなかった場合も新たにひとり親控除の対象になるケースがあったり、逆に高額所得者は基礎控除が減額されるもしくはなくなることで実質増税になったり少なからず影響はあります。
*基礎控除の控除額
所得 | 控除額 |
2400万円以下 | 48万円 |
2400万円超2450万円以下 | 32万円 |
2450万円超2500万円以下 | 16万円 |
2500万円超 | 0万円 |
配偶者控除と配偶者特別控除
〇配偶者控除の要件
前提:納税者本人の所得が1000万円以下であること(給与収入だけの場合1195万円以下)
①民法上の配偶者であること(内縁は認められません)
②納税者と生計を一にしていること
③年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与収入だけの場合103万円以下)
④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
①・②は記載の通りです。④個人事業をされている方に関する事項です。簡単にいえば配偶者を従業員として給与を支払っていたら対象外ということです。
よく言われる103万円の壁というのは③のところになります。合計所得が48万円以下で、なぜ給与収入だけの場合は103万円以下なのか?
給与所得の計算は覚えていますか?
給与所得=収入金額-給与所得控除額
給与所得控除は収入により異なりますが、162.5万円以下は一律55万円です。
つまり、103万円【給与収入】- 55万円【給与所得控除額】= 48万円【所得】となるので配偶者控除の対象になるということです!また、配偶者自身は基礎控除が48万円ありますので、所得は「ゼロ」になります。ですので、配偶者自身の所得税もかからず、配偶者控除の対象にもなるということで、よく“103万円の壁”などと言われ、その範囲内で働くようにされている方が多いということです。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者(※) | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※控除対象配偶者のうちその年の12月31日現在の年齢が70歳以上
出典:国税庁ウェブサイト
給与所得のみの方であれば年収が1095万円以下であれば38万円の配偶者控除受けられることになります。
たまに配偶者の収入が103万円を超えたし、面倒くさいから年末調整で配偶者の名前を書かないという方がいらっしゃいます。確かに配偶者控除の対象になる所得は超えているかもしれませんが、そのような方でも配偶者特別控除の対象になる場合もあります!
また、2018年に配偶者特別控除が改正されており、103万円の壁→150万円の壁になったと話題になったことを覚えてる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
では具体的に配偶者特別控除の要件や控除額について見ていきましょう!
〇配偶者特別控除の要件
基本的には配偶者控除の要件と同じですが、配偶者特別控除では配偶者の所得の要件が異なります。配偶者の所得によって以下のように控除額が段階的に減額されていきます。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
出典:国税庁ウェブサイト
配偶者の所得が48万円超95万円以下の時の控除額は38万円です。(納税者本人の所得が900万円以下の場合)
給与収入だけの場合、給与所得控除があるため配偶者の収入の要件は103万円超150万円以下ということです。つまり、配偶者の収入が150万円までなら配偶者控除と同じ38万円の控除が適用されるということです!103万円の壁から150万円の壁になったというのはこのことがあるからなんですね!
そして配偶者の収入によって段階的に控除額は減少し、給与収入だけの場合で考えると配偶者の収入が約201万円を超えると配偶者特別控除適用からもはずれることになります。

150万円の壁というのはあくまで所得控除での視点の話です。住民税や社会保険料負担を考えると収入が103万円以上150万円以下の場合、38万円の配偶者特別控除を受けられたとしても手取り収入が減少する場合もあるので注意が必要です!
ただ、社会保険料を負担するということは将来の年金(厚生年金)が増えることですので手取り収入が減少することが一概に悪いというわけではありません。
いかがでしたでしょうか?
今回は所得控除のうち「配偶者控除」と「配偶者特別控除」について詳しくを解説をさせていただきました。
ご自身のご家庭が該当するかどうか今一度確認されてみてくださいね!
では今回はこの辺で(@^^)/~~~